【獣医師監修】猫のくしゃみの原因は?病気のサインと気を付けた方がよい症状
公開日:2024.01.15 更新日:2024.02.15
愛猫がくしゃみをしていると、何か病気があるのではと心配になるものです。しかし、単純な生理現象という可能性もあり、病院に行くのをためらっている方もいるのではないでしょうか。 「連発していて止まらない」「くしゃみだけで他の異常はない」など状態もさまざまなので、原因を特定するのは簡単ではありません。しかし、くしゃみの原因にどのようなものがあるかが分かれば、症状を抑えるヒントになるでしょう。 この記事では、くしゃみの原因や、病気の可能性があるサインなどを詳しく紹介します。予防の方法や、すぐにできる対策も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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記事の目次
猫のくしゃみの原因
猫のくしゃみの原因は、生理現象と病気の2つに大きく分類できます。まずはこれらの違いについて理解しましょう。生理現象であれば基本的に心配する必要はありませんが、病気の場合は早期発見・早期治療が大切です。
原因1:生理現象
鼻の粘膜が刺激を受けることで出るくしゃみは、病気ではなく生理現象です。猫砂や空気中のホコリを吸い込むと、鼻の中がムズムズとしてくしゃみをします。この他、香水などの強い香りやタバコの煙、冷たい空気も生理的なくしゃみの原因です。
病気が原因ではないくしゃみは一時的な症状であり、鼻に入ったものが外に出ればくしゃみは止まります。
原因2:病気
くしゃみの原因が病気であり、治療を行わないと止まらないケースもあります。くしゃみの症状が一時的でない場合は、生理現象ではなく病気を疑い、動物病院で受診するのが適切です。
またくしゃみだけでなく、鼻詰まりや鼻水が止まらない、粘り気や色のある鼻水が出ているといった場合も何かしらの病気の可能性があります。思わぬところに原因が見つかることもあるため、早めに獣医師に診断してもらいましょう。
くしゃみを引き起こす猫の病気(感染症)
くしゃみの原因となる病気のうち、感染症に該当するものを紹介します。いずれもウイルスや細菌への感染によって引き起こされるもので、他の猫と接触する際は十分な注意が必要です。また、感染が分かった際は同居の猫と隔離しなければいけません。
主な症状は疾患によって異なります。症状の違いを確認し、原因を見分ける際のヒントにしましょう。
猫カリシウイルス感染症
カリシウイルスはいわゆる「猫風邪」の原因として多く見られるウイルスで、乾燥している環境では3週間~4週間生存します。
ノロウイルスと同程度の強い感染力を持ち、カリシウイルスに感染した猫の分泌物を介して直接、またはウイルスが付着したゲージや食器、人の衣服や手を介して間接的に感染する病気です。
くしゃみや鼻水だけでなく、口の中に症状が出るのも特徴のひとつです。口内炎・歯肉炎・潰瘍ができ、多量のよだれや口臭が見られます。その他、食欲不振や発熱もカリシウイルス感染症で見られる症状です。
猫ヘルペスウイルス感染症
ヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症で、カリシウイルスと同様に猫によく見られるウイルス性の疾患です。ヘルペスウイルスが鼻や目の粘膜に付着して感染し、くしゃみや鼻水、鼻詰まりの他、結膜炎など目の症状が引き起こされます。
発熱や食欲不振も起こり、生後半年に満たない子猫は重症化すると肺炎によって死に至る可能性があります。
くしゃみの飛沫で感染が広がるため、多頭飼育をしている場合は隔離が必要です。また、人間の手や衣服などに付着したウイルスから感染する可能性もあります。
猫クラミジア感染症
猫クラジミア(クラミジア・フェリス)という細菌によって引き起こされます。感染した猫の便や鼻水・目やになどに触れることが主な感染経路です。1歳未満の子猫に多く見られます。
主な症状は結膜炎で、くしゃみや鼻水は症状が出たとしても軽度です。くしゃみは少しだけ出ており、それよりも目の充血や目やにの多さが気になるという場合は、猫クラミジア感染症の可能性があるでしょう。
クリプトコッカス症
クリプトコッカスというカビ(真菌)の一種に感染することで起こる感染症です。空気に漂う真菌の吸入が感染の主な原因であり、人や犬も感染します。
猫の場合、鼻に症状が現れるケースが最も多く、主な症状はくしゃみ・鼻水・鼻詰まりです。進行すると鼻が腫れたり変形したりする場合もあります。
その他、皮膚に膿瘍ができる、中枢神経への影響によってけいれん発作が出る、しこりができるなど症状はさまざまです。
くしゃみを引き起こす猫の病気(非感染症)
感染症ではない病気の影響でくしゃみが出る場合もあります。くしゃみが長く続く場合や体調に異変がある場合は、腫瘍などの大きな病気が隠れているかもしれません。
鼻に問題があると決めつけず、全身をチェックすることが大切です。その上で早めに動物病院を受診し、獣医師の診察や検査を受けましょう。
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎は、ホコリやダニ、花粉などのアレルゲンを体内に取り込むことによって起こります。くしゃみや鼻水、鼻詰まりの他、目や皮膚のかゆみも同時に発生することがある症状です。
花粉がアレルギーの原因である場合、人間と同様に特定の季節だけアレルギー性鼻炎を発症します。春はスギ・ヒノキ、秋はブタクサ・イネなど、花粉にはいくつか種類があります。何に反応しているのか調べるために病院で検査をするのもおすすめです。
副鼻腔炎(蓄膿症)
副鼻腔炎(ふくびくうえん)とは、鼻の内部の炎症が広がり、奥にある副鼻腔という場所に炎症が起こった状態のことをいいます。くしゃみや、ねばつきがある黄色い鼻水が出ることが主な症状です。
治療を行わない、治療がうまくいかないといった理由で、鼻炎が長期間改善されない場合に引き起こされます。
発症する原因として最も多いのは感染症で、副鼻腔炎を防ぐためにも予防や早めの治療が欠かせません。進行すると膿がたまる蓄膿症(ちくのうしょう)になることもあります。
腫瘍(リンパ腫)やポリープ
鼻の中に腫瘍(リンパ腫)やポリープができることで、くしゃみが出ることもあります。7歳以上の猫に見られることが多い病気です。出血する、透明やピンク色の鼻水が出るという症状が現れます。
はじめは片方の穴からのみ出るのが特徴です。進行すると腫瘍が2つの穴を隔てている鼻中隔を溶かし、両方の穴から出血が見られます。鼻や顔全体が変形することもあるでしょう。鼻の腫瘍は悪性であるケースが多く、早期発見が重要です。
歯周病
意外にも、歯周病による炎症がくしゃみの原因になるケースもあります。歯磨きの習慣がない7歳以上の猫は特に注意が必要です。
上あごにある牙(犬歯)の根本は鼻の近くにあるため、歯周病が進行すると周辺の骨が溶けて、鼻の粘膜にまで影響を及ぼします。鼻にまで炎症が広がると、くしゃみや鼻水といった症状が現れることも覚えておくとよいでしょう。
異物
病気ではないものの、鼻に何らかの異物が入ってくしゃみをしている場合も病院での処置が必要です。猫は嗅覚が優れており、においをかぐ習性を持つ動物ですが、その際に細かいものを吸い込んでしまう可能性があります。
おもちゃなどの大きなものが鼻腔内に入る事故も発生しています。くしゃみをしてもなかなか出ないものが入った場合、放置すると病気に進行するため注意が必要です。
高血圧
まれなケースですが、高齢の猫は高血圧がくしゃみの原因である可能性もあります。11歳を超える猫は高血圧によって鼻に微量の出血が起こることがあり、出血が粘膜を刺激してくしゃみが出るという仕組みです。
しかし、高血圧の影響が出やすいのは神経・心臓・目などの部位のため、くしゃみ以外の症状が目立つことが多いでしょう。
猫のくしゃみが病気かもしれないサイン
猫がくしゃみをしている場合は、病気のサインを見逃さないようにしましょう。以下のような様子が見られる場合は、くしゃみの原因が病気である可能性があります。くしゃみがなかなかおさまらないときや、くしゃみ以外の異常が見られるときは受診が必要です。
くしゃみの状態
・連続して出る(連発する)
・数日続いている
鼻の異常
・膿のような状態の鼻水が出る
・鼻血が出る
・腫れや変形がある
目の異常
・目やにが出ている
・目が充血している
口内の異常
・口内炎がある
・歯茎が腫れている
・よだれが出ている
・口臭がある
その他
・発熱している
・食欲がない
また、鼻から空気を連続して吸い込む「逆くしゃみ」が続いている場合も注意が必要です。逆くしゃみは基本的には粘膜が何らかの刺激を受けたときに起こる反応です。
通常、大きな問題はありませんが、何日も続く場合や逆くしゃみをしている時間が長い場合は、鼻や喉に問題がある可能性もあります。実は逆くしゃみではなく咳だったというケースもあるため、様子がおかしいと感じたら獣医師に相談しましょう。
猫のくしゃみの予防と対策
猫のくしゃみは、原因によっては事前の対策で防げます。病気の早期発見やワクチン接種のためには、定期的な通院がおすすめです。また、環境を見直して、愛猫が健康に過ごせるよう心がけることもポイントといえるでしょう。
健康診断やワクチン接種を定期的に受ける
定期的に動物病院に通い、健康診断を受けましょう。猫カリシウイルス感染症で口内炎が出ることがある口の中など、普段なかなか確認できない場所を診察してもらうことも病気の予防に有効です。
また、感染症の原因となるウイルスや細菌の多くは、混合ワクチンの定期的な接種で予防が可能です。混合ワクチンを構成する「コアワクチン」は、猫カリシウイルス感染症・ヘルペスウイルス感染症を予防できます 。
しかし、ワクチンで完全に病気を防げるわけではありません。室内で飼育し、他の猫との接触を避けることも重要な予防方法です。
飼育環境を整える
環境を見直すこともくしゃみの予防につながります。愛猫が過ごす部屋はこまめに掃除を行って、アレルギーの原因となるホコリを取り除きましょう。また、乾燥は感染症のリスクを高めてしまうため、特に寒い時期は加湿も重要です。
ブラッシングをするのも効果的といえます。毛づくろいをした際に被毛に付いたホコリやダニを吸い込むと、アレルギーの原因になるため、清潔な状態を保ちましょう。
まとめ
猫のくしゃみの原因は、生理現象と病気に分けられます。生理現象の場合には問題ありませんが、くしゃみが連続して出る、何日も止まらない、発熱や食欲不振があるなど様子がおかしい場合は、すぐに動物病院で相談しましょう。
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獣医師
石井香絵
ペットの行動コンサルテーション Heart Healing for Pets 代表。 大学卒業後、動物病院で勤務し、アメリカNY州コーネル大学獣医学部Animal Behavior Clinic、キャンザス州のWestwood Animal Hospitalでの経験を経て、帰国。現在では犬猫の問題行動の治療を専門とし、セミナーや執筆活動、メディアなど幅広く活躍。動物専門学校講師を務める。主な著書に「愛犬をやさしく癒すクリスタルヒーリング」がある。
ペットの行動コンサルテーション Heart Healing for Pets 代表。 大学卒業後、動物病院で勤務し、アメリカNY州コーネル大学獣医学部Animal Behavior Clinic、キャンザス州のWestwood Animal Hospitalでの経験を経て、帰国。現在では犬猫の問題行動の治療を専門とし、セミナーや執筆活動、メディアなど幅広く活躍。動物専門学校講師を務める。主な著書に「愛犬をやさしく癒すクリスタルヒーリング」がある。
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